コラム

未払賃金請求期間が延長されています その2 (過払い金返還請求について)

先日の続きになりますが、弁護士が残業代を請求するケースが多くなる理由で過払い金バブル崩壊もあると述べました。過払い金バブルと言っても一般的には馴染みが無いかもしれませんが、これは弁護士が過去に消費者金融やクレジットカードのキャッシングで借りた際に支払った金利を返してもらう手続きの事を指します。これは多重債務問題と大きな関係があります。

1980年代、いわゆるサラ金やクレジット会社、商工ローンによる個人の金銭債務者に対する貸金業者の過酷な取り立てが問題になっていました。家に取り立てに来るのは普通で、会社に取り立てに来て結果退職にせざるを得ない、家族を巻き込んで結果一家離散や夜逃げ、最悪の場合は自殺を図る人も数多くいました。その原因として、3つの問題点(高金利・過剰融資・過酷な取り立て)があります。多重債務問題解決は、この借金地獄で苦しんでいる人を救済、そしてそこに陥らないためにどうするかと言う視点に立っています。

多重債務問題の解決を狙った改正貸金業法が2006年12月に抜本改正され、段階的に施工されて2010年6月に完全施行されました。それまでは貸金業者が高金利、過剰な貸し付けがあります。簡単な審査で借入が可能な商品が多く、借り手の金融知識や返済計画をしっかり考えないで安易に借りると言う背景があります。

過払い金返還でよく出るフレーズでグレーゾーン金利があります。これは貸金業者からお金を借りた場合の金利が関係します。金利の上限は貸金業法の他に出資法と利息制限法が関係しています。

法律上の上限金利には、

(1) 利息制限法の上限金利(超過すると民事上無効):貸付額に応じ15%~20%

(2) 出資法の上限金利(超過すると刑事罰):改正前は29.2%

の2つがあります。これまで、貸金業者がお金を貸す場合、この出資法の上限金利と利息制限法の上限金利の間の金利帯でも一定の要件を満たすと有効となっていました。これが、いわゆる「グレーゾーン金利」です。

貸金業者の立場になってみると、出資法と利息制限法で定められた上限金利が違う状態で、利息制限法の20%を超えていても出資法の29.2%を超えていなければ刑事罰が科されないので出資法の29.3%の上限を適用してお金を貸すということはある意味当然かも知れません。

グレーゾーン金利

多重債務問題が顕在化して為、利用者の金利負担の軽減という考え方から、平成22年6月18日以降、出資法の上限金利が20%に引き下げられ、グレーゾーン金利が撤廃されました。

これによって、上限金利は利息制限法の水準(貸付額に応じ15%~20%)となります。なお、利息制限法の上限金利を超える金利帯での貸付けは民事上無効で、行政処分の対象にもなります。出資法の上限金利を超える金利帯での貸付けは、刑事罰の対象です。

弁護士、司法書士が行っている過払い金返還請求は、平成22年6月17日以前に借入を開始した借入金又は借金を完済してから10年以内(改正前民法の場合)の消費者金融やクレジットカードのキャッシング等で借りた金の利息制限法の上限を超えて支払った金利を返してもらう手続きをお願いしていると言う事になります。

過払い金の返還請求が広く行われる事になったのは、平成18年1月13日の最高裁判所の画期的な判決(シティズ判決)があります。この判決を一言で言うと、いわゆるグレーゾーン金利で支払った金利は違法となり、その違法な金利で支払っていたお金を過払い金として取り戻す事が出来るっと言った内容です。商工ローンのシティズ(現在はアイフルに統合されたみたいです)みなし弁済の主張が認められなかったと言う事ですが、弁護士ではないのでこういう表現が妥当か判断出来ないので、詳細は裁判所ホームページの裁判例検索をご覧下さい。

事件番号平成16(受)1518 シティズ最高裁判決

最高裁のシティズ判決でクレーゾーン金利は違法とされた為、消費者金融や商工ローン、クレジットカードのキャッシング等で支払っていた利息の一部が過払金として返還の対象となり、弁護士や司法書士がテレビやラジオCM、その他ありとあらゆる広告をうつ事で世間に注目されました。

過払金を個人で請求するには手続きが容易ではなく、貸金業者も素直に応じないので債務者自身が請求するよりはノウハウを持った弁護士や司法書士に依頼するのが当然となっています。

これまで返還された金額、これまでに10兆円を超えるという記事を目にした事があります。このほとんどが弁護士や一部司法書士の手続きによるものでしょう。返還額の一般的な相場は20%前後と言われていますので、仮に10兆円を弁護士・司法書士が行ったとすれば、2兆円前後の成功報酬が弁護士・司法書士事務所に行くわけですから、それは過払金バブルと呼ばれるのも納得出来ます。

弊所のスタッフに前職が大手司法書士法人に勤めていた子がいます。そこの事務所は過払い金請求業に力を入れていてスタッフも通常の士業事務所では考えられないレベルの人数がいて、マスメディア等へのCM広告を盛んに行っており毎日凄い数の依頼が日本全国から来ていたそうです。

過払金バブルの中、過払金CMで一躍有名になった大手弁護士法人東京ミネルヴァの破産がありました。過払金返還請求は完済後10年以内に請求が必要な為、そもそもの依頼者の母数が底を突き始めており、過払い金ビジネスバブルの終焉となりました。その過払金バブルの次に来るのが『未払残業代請求バブル』です。さて、ここからが今回のコラムの本題で、社労士として書きたかったことになりますがまたまた長くなってしまいました。

『未払賃金が請求出来る期間などが延長されています』のリーフレットを紹介する予定でしたが、次の機会にしたいと思います。次こそリーフレットの紹介をしたいと思います^_^;

最後までお読みいだき有り難うございました。