コラム

派遣労働者の5月危機

最近、ネットで『派遣労働者の5月危機』なる記事を見ました。テレビやラジオなどのマスメディアはまだまだこの問題について報道は少なく、これから出てくるのでしょうが深刻な問題が現実に起きております。

派遣労働者の5月危機を簡単に説明しますと、派遣労働者は一般的に3か月や6か月の契約を繰り返し更新していることが多いのですが、年度の始まりである4月は大量に派遣契約が発生します。3か月更新の場合、4月スタートの契約は6月末迄の契約になります。新型コロナ感染症問題が発生していなければ、景気の好調差もあって全体的に人手が足りない状況でしたので、普通に7月以降も派遣先と派遣元の派遣労働者契約は更新されたことでしょう。

ただ、コロナ感染症拡大にともなって、ここ二、三ヶ月で景気が急速に悪くなっております。先が見通せない情勢の中、7月以降もそのまま契約更新するのは得策ではないと判断した派遣先企業が、取り敢えず6月末で契約通りに終了する判断した場合、派遣元の派遣会社は7月以降の仕事先を探すわけですが、このような情勢ですので新たな派遣先を探すのは容易ではありません。しかも派遣会社では働く労働者は常用型と登録型の二つに契約形態が分かれます。

常用型は派遣会社とは常に労働契約を結んでいますので、先ずはその人達の派遣先を探します。登録型はその名の通り、派遣会社に氏名や希望する職種や業務、自分の持ってるスキル等を登録しておいて、実際に仕事の依頼があったときに派遣元と労働契約を結び晴れて労働者となり派遣先の企業で働きます。

登録型の派遣スタッフは、派遣会社の社員(正社員の社員とは別)としていられるのは派遣先で仕事をしている場合だけになるのが一般的です。そして常用型スタッフと違い、常時派遣元の派遣会社と雇用(労働)契約があるわけではないので、派遣先から仕事を切られた場合、次に紹介される派遣先探しは常用型のスタッフに比べて後回しになってしまうのでが現状です。

そして危機とも呼ばれるには理由があります。それは残念なことではありますが、派遣労働者は未だに『雇用の調節弁』となっており、景気の動向によって雇用が調整される宿命にあります。言葉の表現が適切じゃないかもしれませんが、実態はそれが現実だと思います。契約期間を3か月と短くしているのは、まさに人員の調整が容易になるからです。

企業は業績が悪くなった場合、経費の見直しや事業を縮小、やむを得ない場合は人員削減もするでしょう。退職勧奨や、場合によっては整理解雇等で従業員に会社を辞めてもらいます。しかしながら正社員は労働基準法等で手厚く保護されております。日本は正社員の解雇にはとても厳しい国です。相当な理由がない限り解雇はできないのですが、この相当な理由のハードルがもの凄く高いです。整理解雇するためには諸々の条件があるのですが、これは別の機会にお話ししたいと思いますが、間違い無く言えることは、労働者は意識する事は少ないと思いますが、労働法によってしっかり守られていることはお伝えしたいです。

従業員一人解雇するにも表現が悪いですが手間暇が掛かります。それに比べて派遣労働者は、派遣先は契約を更新しなれば簡単に人減らしが出来ます。日本の雇用者数は総務省統計局の労働力調査によりますと、5,660万人、正規の従業員数は3,494万人、非正規の労働者は2,165万人となっており、働く人の約38%は非正規労働者になります。この大勢の人達が今まさに雇い止めの危機にさらされています。

派遣先がなくなっても派遣元の派遣会社は直ちに(自動的に)派遣労働者を解雇することは違法になる可能性が高いです。それは単に会社間同士の契約がなくなっただけですので、雇用維持に努めるべく、解雇するには一定の前提条件がありますし、今は解雇の予防のために雇用調整助成金の特例措置が設けられていますので、解雇しなくても休業の道がありますので、その選択肢を選ばないで直ちに解雇は違法性が高いと私は思います。

派遣元の派遣会社に対して厚生労働省は次のような注意喚起を行っておりますが、現状派遣切りは増えてる現状があります。