コラム

雇調⾦は誰を守ったのか

8月13日(金)の日経新聞の夕刊に気になる記事がアップされていましたので紹介します。

雇調金は誰を守ったか8月13日 日経新聞夕刊より

記事によりますと、リーマン・ショックを上回る戦後最悪の経済の落ち込みになったにも関わらず雇用崩壊を免れているのは雇用調整助成金の効果だと紹介しております。

確かに、1986年12月から1991年2月までは資産価値が上昇そして好景気だった、いわゆるバブル景気の頃の失業率は2%程度でした。そしてバブル崩壊後はどんどん悪化し2002年には5.5%まで上昇しました。その後景気の回復にともない失業率も低下したものの、2008年9月に発生したリーマン・ショックをきっかけに急上昇していきます。2009年7月頃には5.6%に達しました。

では戦後最悪の経済の落ち込みとなったコロナショック禍での現在の失業率は8月5日のコラム『失業率は下がったものの その1』でも紹介しましたが、集計結果が出ている6月の完全失業率は2.8%と驚きの数字になっています。この数字がまさに記事で述べている雇用調整助成金の効果が間違い無くあったことの証明になるかと思います。

リーマン・ショックの際は、今回のように休業手当を受け取って仕事を休むという仕組みがなかったので、リストラにあって職を失った人、若しくは自発的に会社を辞めた人達が多く発生し、結果5.5%まで悪化したということでしょう。今回の場合は雇用調整助成金を利用することによって休業者は爆発的に増えてはおりますが雇用関係は維持されていますので、失業率が大きく悪化することを防いだと言えるでしょう。

また、雇用調整助成金はどちらかというと、これまでは大企業が利用することが多かったのですが、今回に関しては中小企業の利用率が高くなっております。また正社員よりも圧倒的に非正規社員の休業者を守ったということがデータで示されています。ここも大きな違いでしょう。

雇用調整助成金は政府が従業員の給料を事業主の代わりに支払っています。今回は雇用保険の被保険者ではない人達も緊急雇用安定助成金という名前で雇用調整助成金と同様な支援をしておりますので、この措置も失業率悪化を防ぐ大きな役割を担っていると思います。

しかしながら、完全実業率だけをみれば大きな雇用の崩壊はおきておりませんが、8月11日のコラム『失業率は下がったものの その2』でも述べましたが、有効求人倍率は6ヶ月連続悪化1.11倍と低下しています。私の故郷沖縄に至っては0.68倍という非常に厳しい数字となっています。


これは、何とか雇用調整助成金によって雇用は維持されているものの、一旦職を失うと再就職が厳しいと言う事です。野村総研の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、新たに失業者が265万人、失業率は戦後最悪の6%台が現実に起こり得るとダイアモンドオンラインで述べております。それは、雇用調整助成金で雇用が維持されているが、景気が元の水準まで戻るには年単位になると見込まれる状況、現実にほとんどの企業で売上が伸びないにも関わらず、家賃や人件費等の固定費は以前と変わらないのでどうしても資金繰りの問題が発生します。

そんな状況下で新たに人を採用することを控えるのは当然でしょう、会社全体で見た場合規模を縮小せざるを得ませんし、残念ながら大失業時代の到来は避けられない状況になりつつあると警鐘を鳴らしています。そんな状況下で株式市場が不気味に盛り上がっていることに対して違和感を覚えます。

各国の異次元、無制限の金融緩和によるものでしょうが日銀は株価の下支えにビックリするような額を使っております。その一部を他の支援に回すことが出来ないのかとつい思ってしますが、何れにしましてもリーマン・ショック後も一度落ち込んだ失業率を戻すのに数年規模の時間を費やしております。先ずは隠れ失業者を失業者に変えない為にも雇用維持の政策を雇用調整助成金だけに頼らずに他の施策を打ち出し、併せて企業のそのものの経営維持を図るための給付金や1回目より2回目の資金繰りがかなり厳しくなっていると言われておりますので、資金繰り支援の拡充を図ってもらい、企業のダメージを最小限に抑えてコロナ収束後に企業として速やかに立ち上がれる環境作りに政府は注力していただきたいと思います。

収束後の話をしましたが、医療の面ではコロナとの戦いはまさに現在進行形です。医師や保健師、その他感染リスクが高い職業でも社会の為に働いている職業の方々に感謝し、今後も士業としてお客様の為に出来る事を日々模索していきたいと思います。

本日は以上となります。最後までお読みいだだきありがとうございました。