雇調金の特例 延長へ
昨日まで与党ベースで雇調金の特例の期間延長を検討されていると報道各社が報じておりましたが、今朝の日経新聞朝刊一面に次のような記事が出ております。厚生労働省が特例期間を年末程度まで延長することを軸として検討するとのこと。もともと6月30日までがこの特例措置がなされていた期間、ガイドブックでは緊急対応期間と表現していますが、この期間が9月30日まで延長されましたので、それを仮に12月31日までの延長となりますと再延長になります。
日経新聞朝刊より
記事では特例措置の一つである1人1日あたりの助成上限額が8,330円から15,000円に引き上げられている部分だけ紹介されておりますが、実際の雇調金の申請に当たっては様々な要件が緩和されており、また雇調金が利用出来る適用業種が拡大され全ての業種で利用可能になり、使い勝手が良くなった点は他にも沢山あります。特例による拡大措置をガイドブックから引用して紹介致しますと、以下の図のように従来の雇調金と比較すると、ある意味別物かと思ってしまうほどです。現実的にはこの図では分かりませんが、申請書類の数、記入項目、添付書類も半分から物によっては三分の一になっていますので、社労士が代理申請出来る数ある助成金のなかでも非常に難易度が高い雇調金が、今回の特例措置によって申請することについては非常に楽になっております。また、パート従業員を対象にしている緊急安定助成金の措置も含めて検討するそうです。
ただ、気をつけなくてはならないのは、申請書が大きく簡素化され添付書類の数が激減したとは言え、審査自体は従来の雇調金に比べれば多少のことは片目をつぶってくれているにしても最低限クリアしなければならない基本的な要件は抑えていないといけません。それを抑えていないと追加の資料の提出を求められ結果的に助成金が振り込まれるまで二ヶ月、三ヶ月と掛かってしまうことになります。
審査に時間が掛かる最大の理由は、労働・休日の実績に関する書類(ガイドブックで例として示されているのは、タイムカードや出勤簿、シフト表)と休業手当・賃金の実績に関する書類(賃金台帳、給与明細)が、審査担当者がそれを見てサクッと判断出来ない状況だと言われています。例えばタイムカードをそのまま提出してしまうと審査する人は、どの日がコロナ休業なのか、コロナ短時間なのか細かくみないと判断が付かないと思います。そこに会社の担当者が分かり安くタイムカードにマーカーでアンダーラインを引くとか、ボールペンで休日と打刻された日にコロナと書き添える。コロナ短時間の場合もそうです。
また休業手当を確認するための実績に関する書類もしかりです。例えば賃台や給与明細に幾ら休業控除をしたのか、そして幾ら休業手当を出したのかがハッキリ分かるようにしておかないと、審査担当者は分からないで確認の電話をするでしょうし追加資料の提出を求めるかも知れません。
私は個人的には、ガイドブックにコロナ休日やコロナ短時間、コロナ休業控除、コロナ休業手当等を記入して提出を最初から謳った方が、審査から支給決定までの時間にこんなにも費やすことはなかったと思います。雇用調整助成金、人数や期間にわたってはもの凄い額になります。それを三ヶ月、四ヶ月分まとめて申請するとかなりの金額になります。企業によってはそのお金を月末の支払等に当て込んでいたかもしれません。それが二ヶ月三ヶ月掛かっても振り込まれないとなるとそれは企業によって死活問題です。
4月や5月に申請して不許可や不受理とない申請をあきらめた事業主も多数いるそうです。また3月や4月頃は今より申請書の要件緩和や簡素化がなされておりませんでした。その為申請書の書き方や添付書類の準備が難しく、分からないで質問をしようとして電話しても全く繋がらない状況が普通にありました。電話が繋がらないので直接ハローワークや労働局、雇調金センターに訪問しても鬼の様に混んでいる。予約制が始まったのは良いが予約が取れるのが1か月先とか普通にありました。不慣れな事業主や担当者が難しく分からないなりにも頑張って何とか申請書を作って持参しても、これがだめ、あれがだめと指摘され心がおれて申請をあきらめたというニュースや新聞記事を何度も見ました。雇用調整助成金の代理申請が出来る唯一の専門家である社労士でさえ、連帯責任という大きな壁に阻まれて安易に受託出来ない状況が続いたりもしました。
こんな厳しい状況でしたので、厚生労働省も申請者の利便性を考えて度重なる要件緩和を繰り返したのは良いが、毎週のように何かしら変わっているとかでハローワークの担当者すら把握していないことが多々ありました。確認の為ハローワークに電話してもつながらない。私もそうですが、そもそもが助成金を専門としている社労士は非常に少なく、顧問先から依頼があった時に対応する先生が大半かと思います。あまりにも短期間でいろいろ変わりましたので社労士でさえ行政に問い合わせないと対応出来ないことがありました。その行政の担当が理解してない過去の情報で話している現状、ハローワーク職員も相当苦労していと思います。幸い社労士は社労士の全国組織である全国社会保険労務士連合会が社労士専門の電話相談窓口を設置していただきましたので、私も分からないとことや確認したいことはそこに電話していろいろおえしていただきました。
話が脱線してしまいましたが、この緊急対応期間が延長されることは必然かと思います。4月5月は飲食店を中心に休廃業が多く出ましたが、持続化給付金を始めとする補助金や助成金、キャッシュローの面でも実質金利ゼロで運転資金等がかなり借りやすくなったので多くの事業主が日本政策金融公庫等を中心に各金融機関から調達したと思います。ただ、コロナ感染症の新規感染者数は全国でも日々更新されていますし、東京都でも飲食店に営業時間短縮の要請が始まっております。
こういった状況がまだまだ続くと予想され9月からは大幅に失業者が増えると専門家の人達が述べております。事業主は運転資金の調達同様、雇用調整助成金、新型コロナ感染症対応休業支援金・給付金等利用出来る助成金はフル活用して雇用の維持に努めると思います。最低12月末までの緊急対応期間の再延長は間違い無いと思いますが、特例で1月24日から5月31日までの申請期限が8月31日までとなっていますので、その期限の見直しをしてもらいたいです。6月末までの申請も今月31日までですので、それを過ぎますと過去の分が期限切れで申請すら出来なくなります。支給要件をクリアしててもまだ申請にたどり着けていない事業者が相当数あると思われます。雇調金の中身がほぼ原形がわからない位要件緩和しておりますので、ここは是非とも特例措置の中に提出期限の延長も折り込んでいただき延長がなされることを期待します。
本日は以上となります。最後までお読みいだだきありがとうございました。