自筆証書遺言書保管制度について その2
前回は自筆証書遺言の方式緩和迄紹介しましたが、今回は、来月7月10日から施行される自筆証書遺言書保管制度について紹介したいと思います。
そもそも論として、資産を沢山持っていない人は遺言は作る必要があるのか、と思う方もいるかもしれませんが、そんな油断が残された家族や親族同士の争いをもたらすことになりかねません。遺産相続では、遺言優先の原則により、法定相続よりも遺言による相続が優先されるので、いらぬ家族間のトラブルを防いでくれる場合があります。
例えばお父さんが亡くなって、独立した兄弟達が不仲だったり、再婚していて、先妻にも現在の妻にも子供がいる場合、法定相続分とは違う相続をさせるためには、遺言書で遺産の分割方法を決めておかないといけません。
また、仮に内縁の妻がいる場合、法律上は婚姻関係ではありませんので、内縁の妻には相続権がありませんので、財産を残してあげたいのであれば遺言書が必要となります。他にもいろいろと想定されることがありますので、後々のことを考えると遺言書を作成した方が得策だと思われます。
歳がばれてしまいますが、昔、佐久間良子主演で遺産相続という映画がありました。当時25歳位の時に観たのですが、内容があまりにも強烈な映画で、私の記憶に強く印象に残っています。題材としてはドラマにもありがちですが、本妻、内縁の妻、愛人、そして子供達が莫大な遺産を巡って壮絶なバトル、それはある意味戦争でしたねw 今の私ならそのときに有効な遺言書があれば・・・と思ってしまいすが。
話が脱線して前置きが長くなりましたが、遺言書の保管制度について紹介します。
5.法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設について 2020年7月10日施行
自筆で遺言書を書くメリットとしては、やっぱり費用がかからないということが大きいと思います。公証役場に出かけて公証人に作成してもらう手間も要りませんし、公証人に支払う報酬もかかりませんので、筆記用具があれば実質ゼロ円で作成出来ます。
しかし、その反面大きなデメリットもあります。それは自分で遺言書を管理しないといけません。映画やドラマの世界ではありませんが、しっかり管理しないと、遺言書が偽造されたり改ざんされたりする可能性もあります。それを防ぐために誰にも見つからない所で保管しても、いざ相続が発生した時に見つけてもらえない可能性があります。それを防ぐために銀行等で貸金庫を借りて保管したら、結局費用を押さえた意味がありません。
今回の自筆証書遺言保管制度の創設は、自分で気軽に作成した遺言書を、法務局に預けることでこうした問題が一気に解消されますので、この制度の使い勝手は非常によさげです。保管手数料が遺言書1件あたりわずか3,900円と言うのもありがたいです。閲覧とは1回1,700となっております。詳しくは法務省のサイトのリンクを貼っておきます。
何かと便利な保管制度なのですが、問題点も幾つかありますので考えられるデメリットを幾つか紹介します。
- 遺言書のチェックは形式面だけ(法務局でのあずかりは公証人などの専門的なアドバイスは行わず、氏名が入っているか、日付は入っているか等のチェックだけなので、その遺言書の内容次第ではトラブル防止機能が弱くなる可能性がある)
- 本人が直接法務局に出向かなければならない(代理人による手続も認められていないので、病気等で法務局に行けない人は利用出来ない)
- 遺言書の閲覧があった場合、他の相続人にその旨の通知はされるが、肝心な遺言者の死亡に伴い自動的に通知されないので、誰かに遺言書を法務局に預けていると知らしておく必要があるので、秘密性が緩む。
幾つかのデメリットはあると思いますが、法務局に預けている遺言は検認手続が不要になりますし、遺言の執行にさいし遺言原本でなくても、遺言書情報証明書が代用してそれは複数発行も出来ますので、預金の解約手続や相続登記を同時にすることが出来ますので、遺産相続という観点からみると大幅な時間短縮に繋がるとおもいます。
本日は以上となります。最後までお読みいだだきありがとうございました。