コラム

トラック運転手が大量定年、迫る物流崩壊③

トラック運転手大量定年による物流崩壊③

 今日は女性のドライバーの積極的採用についてお話ししたいと思います。前回の記事で若手ドライバーが減少し、併せてドライバーさんの高齢化率が高まっていることに伴い、将来的に深刻なドライバーさんが不足に陥ることをお伝えしてしました。物流業界、とりわけトラック運送業界ではドライバー不足問題は死活問題で、ある意味会社が存続するための重要なファクターなのは間違いないと思います。

私の前職の運送会社は建設資材運搬がメインの会社でした。2tから15t迄全車ユニック付き(カーゴクレーン=積載型のトラッククレーン)のトラックを保有しており、トータル20台位の小さな運送会社でしたがスーパーゼネコン三社と直接取引している1次業者でした。故に建設業界が東京オリンピックに向け如何に忙しいかを常々感じておりましたし、このオリンピック特需に沸く一方で建設業界も深刻な職人さん不足に陥っているとこと承知しておりました。この人手不足問題について運送業界と建設業界共通している所が幾つもあります。建設業界が女性人材の積極的活用に向けて取り組んでいること、運送業界も参考になると思いますので後ほど紹介します。

本題に戻りますが全トラックドライバーのうち女性ドライバーの占める割合は僅か2%程度していないのが実情です。下図の総務省「労働力調査」によると、建設業も就業者に占める女性の割合は低いです。これは普通に考えて肉体を酷使する現場作業員は他の産業より低くなるのは理解出来ます。しかしながらそれよりも気になるのは、体力的にはかなり楽であろうトラックドライバーの女性の割合が建設業界より更に10%以上も少ないと事です。

国土交通省「ドライバー不足の対策していますか?」より引用

 また大型免許を保有している女性ドライバーで、実際トラックに乗って仕事をしている女性は6.1%と低い数字が示しているのは何かしらの原因があるでしょう。逆にその問題を潰していけばこの数字も改善されると思います。

国土交通省「ドライバー不足の対策していますか?」より引用

残念ながら私が勤めていた運送会社も女性のドライバーさんは一人もいませんでした。創業して約55年の会社でしたが、その間女性のドライバーはほぼいなかったと聞いております。女性ドライバーを活用することは企業側に大きなメリットが多数あります。先ずはドライバーの人手不足問題解消になりますし、男性の中に女性が一人いるだけで男性の言葉遣いや身だしなみもよくなり職場の雰囲気も良くなることでしょう。また女性ならでは気配りで営業力の強化にもつながります。

では女性がドライバー職として就職する際に、入社を希望する会社に対して重要視するポイントを三つあげたいと思います。他にもあるかとおもいますが、概ねこれらを改善すれば女性が働きやすい環境になり応募も増えるのではないでしょうか。

① 体力面で無理がないか:これはある意味最低条件です。女性が運べない重い荷物はないか。労働基準法でも女性は母体保護の観点から重量物の取扱については就業制限しております。断続作業なら30㎏継続作業であっても20㎏のしばりがあります。妊産婦にいたってはもっと厳しいしばりがあります。

② 女性が働ける職場環境:普通の会社なら当たり前の事かも知れませんが、女性専用トイレはあるか。女性専用更衣室はあるか、男性の言葉遣いを含めた社内のセクハラ対策はしっかり行っているか。後以外と忘れがちなのですが荷主に対して女性を活用することについてしっかり説明して理解を得ているかも重要です。トラックもAT車両を積極的に導入も有効かと思います。

② 仕事と家庭の両立:ドライバーとしての仕事とプライベートを両立しやすい環境を作るために、短時間労働者としての採用、出勤時間を男性に合わせるのではなく、遅出や早退も可能な体制を図るようにする。育児・介護休業制度をしっかり取れるようにする事も大事です。

最近は国土交通省トラガール促進プロジェクトなるものあります。リンクを貼っておきますので、ドライバー不足で困っているトラック運送会社はのぞいてみることをお奨めします。

国土交通省 トラガール促進プロジェクトURL:https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/

 冒頭に建設業界と運送業界は人手不足問題に共通しているがあると述べましたが、建設業界も女性を積極的に活用に力を入れていること肌に感じておりました。私が勤めていた運送会社は荷主が大手ゼネコンやサブコン、その下請け会社からいただいておりました。その関係で現場へ事業主パトロールに月に平均10回は行っておりました。併せて災害防止協議会への出席もしていたのですが、現場に寄っては女性監督がおられました。勿論現場事務所には女性はおりますが、現場監督として女性が働いていることはほぼ皆無に等しかったのですが、今は結構な人数の女性がそのスーパーゼネコンでは働いております。女性活躍推進法の行動計画において、新卒採用女性比率を2割以上を目標に取り組んでいるゼネコンが増えてきていると思います。これらの現場事務所は女性専用のシャワー室、トイレ、鏡台を設置しており、女性監督の作業着を専用ユニホームにとモデルチェンジ、ヘルメットや安全帯を女性仕様に変更するなど、働く環境面をこれまでの男性中心の視点からしっかり見据えた改善を行っています。また社員の意識改革と職場の風土改革の為に様々な研修を行っております。

表現か変かも知れませんが、今建設業界は女性起用ブームが起きていると思います。一昔前なら、一体、女になにができるんだっ!?って言っていた職人さんも今時は逆に若い女性現場監督に色々教えてあげています。そうです、新卒で現場に入って来た現場監督は男性女性の区別なくあんまり使えません。そればむしろ当たり前の事で何十年も建設業界にいた職人さんに色んな事を教えてもらって成長するのですから。若い男性の現場監督には怒鳴って教えることも、女性の監督には優しく包み込むようにまるで自分の子供のように教えている光景、現場パトロールの時何度か見たことがあります。そう言えば私も女性監督がいる現場には、事業主パトロール行くの腰が軽くなっておりました(笑)

さて、同じ人手不足問題悩む建設業界の取組をザックリ紹介しましたが、運送業界もバスの女性ドライバーさんはそれなりに多くなってきました。私がたまに利用する川崎市営バス、臨港バスも女性のドライバーさんがおります。また建設関係ではありますが、ミキサー車やダンプ、ラフター(ラフテレーンクレーン)のオペさんも女性が増えてきた印象があります。とは言っても冒頭の図がしめすように女性ドライバーの就業率は2%台が何年も続いております。他の業界に女性の人材を奪われないように業界が一つになって各社のトップが先ずは意識改革を行い、出来ることから少しつづ前に進んで行くことだと思います。

本日は以上となります。最後までお読み頂きありがとうございました。